(読書)総員玉砕せよ! 水木しげる:著

総員玉砕せよ! (講談社文庫)

総員玉砕せよ! (講談社文庫)

(裏表紙より)
昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、五百人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長篇コミック。

 玉砕を命じられた部隊の物語です。作者の水木さんいわく、「90%実話」とのこと。実際に玉砕した部隊がモデルらしい。職業軍人じゃない徴兵で戦地に赴いた人々のホンワカとした描写、「ビビビビビ」と表現される古参兵のビンタシーン、一兵卒となったその人々がただの駒となり紙くずのように死んでいく様子は、戦争の体験者にしか描けないものなんだろう。

 内地が空襲をうけている状況で、こんな離島の拠点を死守する意味があるんでしょうか、みたいなシーンがあった。結局は玉砕してでも死守、という結論になってしまうわけですが、理不尽で悲しすぎますよね。情報社会となった現代の人々はたとえ戦争になってもそんな無謀な作戦は実行しない、それだけの叡智が先の戦争を通して備わっていると信じたいです。

 最近の尖閣問題、北方領土問題を通して「戦争をしましょう」という風潮になっているけど、日本は外交がダメダメだからだと思う。他国からありえない挑発をうけ、政府も解決できないとなると、国民がそういう気持ちになるのも当然。戦後アメリカから押し付けられた平和憲法を大事そうに崇め奉り、核もちません、戦争しませんとバカのように言いまわってるのだから、他国からなめられもする。

 世界は腹黒い、それぞれ自国の利益になるためだったら、相手にとって不利益かどうかなんて考えもせず主張してくる。ま、当然ですよね。戦う姿勢(ファイティングスピリッツ)の欠如、バブル以降どんどん削られる防衛費、これは外交面での当たりの弱さの原因だろう。軍隊を持つイコール酷い戦争に突入という図式にはならない。軍隊があろうとなかろうと他国から侵略されたり、ミサイル投げつけられたりしたら人は酷く死ぬわけだし。軍隊を増強し、核ももって、主張すべきところは主張し、国は国民の命と利益をまもり、国民自身も政治に関心をもち、無益なイクサになだれこまないようにコントロールしていかないといけない。世界を知らぬ間に戦争に導こうとしている見えない勢力にも要注意。