- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/09/13
- メディア: 新書
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「幸せの青い鳥」をさがす国民
(前略)橋下氏を支持している人たちは、橋下氏の「なるべく国や府市に頼らず、自分たちでできることは自分たちでやる」という政策方針に必ずしも共感しているわけではありません。
なぜ彼らが橋下氏を応援するのかといえば、「橋下氏ならば、この停滞した日本の政治にメスを入れてくれるのではないか」と期待しているからです。
(中略)つまり、この人たちは「とにかく現在の状況が気に入らないので、誰でもいいから状況をひっくり返してくれる人」を支持しているのです。
「新しい人」「新しい政党」に期待しては裏切られるということを、ひたすら続けている。まさにメーテルリンクの『青い鳥』の中に出てくる、チルチルとミチルです。
(p.18,19)
青い鳥をさがしている段階では、本気で政治に向き合えていないということですね。
地域振興券
ちょっと古い話ですが、かつて似たような政策に1999年に国民に配られた「地域振興券」(中略)というものがあったのを覚えているでしょうか。自民党と公明党の連立政権が、景気浮揚のために打ち出した政策ですが、これは経済的にはまったく意味がありませんでした。
なぜかと言えば、1回限りの給付だったからです。1回限りのものであれば、多少お金が入ったとしても使わないで預金する人が増えてしまいます。
(p.47, 48)
あー、地域振興券あったなー。うちは何に使ったんだったか覚えていない。
子ども手当
経済学的に言えば、継続的にお金がもらえるという安心感があればこそ、人はお金を使うのです。子ども手当も、これが恒久的な制度として確立されれば、かなり大きな経済効果が期待できたでしょう。
ところが、詳しいことは省きますが、自民党の反対によって、毎年毎年、子ども手当を出すかどうか審議する制度になってしまいました。すると、今年は出たけど、来年は出るかどうかわからないとうい話になり、「それなら預金をしておいたほうがいいか」ということになってしまいます。
(p.48)
子ども手当に国民の支持があつまり政権をとったはずなのに、だらしない。自民党の反対も国民の声を無視したものであったと。
デンマークはすごいらしいっすよ。
要するに、デンマークは、老後のために現役の時に預貯金をしておく必要がまったくない仕組みを作り上げたのです。幼稚園から大学までの教育費も無料ですから、子育ての心配もありません。ですから、稼いだお金はどんどん使うことがてきる。すると経済を活性化します。
少し乱暴な言い方かもしれませんが、デンマークでは税金を払うということは、つもるところ国に貯金をしているようなものなのです。払った文が自分に帰ってくることがわかっていれば、文句はでません。一方、自分が払った文が無駄遣いに消えているのではないか、特定の誰かの私腹を肥やしているのではないか、と疑われると不満が噴出します。
デンマークではこのような国の仕組みをとっているため、結果的に選挙では高い投票率につながっています。何しろ近年、投票率が80%を切ったことがありません。
(p.51)
デン、マーク!
宗教
では、創価学会と宗教的に対立している他の宗教団体はどうしているのかご存知ですか。たとえば立正佼成会などは、「半公明党」ということで、民主党の応援をしたり,自民党の応援をしたりしています。
日本全国を探すと、そうした宗教組織はたくさんあります。ですから、自民党や民主党の政治家たちは、選挙の前になると、奥さんをさまざまな宗教団体のにわか信者にしたり、宗教団体の本部に数珠をもっていったりして、関係を深めて基礎票にしようとしたりまします。
(中略)(
浄土宗や浄土真宗といったいわゆる伝統的な宗教組織は、政治に関与することはありませんが、立正佼成会や生長の家などいわゆる新興宗教といわれる組織、あるいは神社系は自民党の支持母体であることが多いのです。
(p. 57, 58)
にわか信者戦略、ほんとうにあるのか!?
憲法は権力者にあてたもの
(前略)よく憲法改正の議論をしていると、「愛国心を持つこと」などを条文に盛り込んで国民に守らせようという主張をする人もいます。しかし、憲法にそれを書くのはおかしなことです。民定憲法はあくまで権力者に対して、あるいは役人たちに対して、これを守りなさいよといっているものだからです(後略)。
(p.103)
そうだったのか・・・。
エリート中のエリート
完了の卵からすると、どうせ役人になるのなら強い力を持っている省庁に入りたいと思うものです。だからキャリア官僚の中でも成績が優秀な人は大蔵省、財務省に入っていく。実際、予選編成の実務を担当する主計官あたりと話をすると、「世の中にはこんなに頭のいいやつがいるのか」と驚きます。彼らは、知識や頭の回転がピカイチなだけでなく、体力もある。どれだけ徹夜しても、びくともしない。キャリア官僚はものすごく過酷な労働条件ですから、「ひ弱な秀才」には務まりません。大蔵省の建物を指して「ホテル大蔵(オークラ)」だと言われたほど、予選編成のときには、ずっと省庁に泊まりこむわけです。
そのような知力・体力を兼ね備えた人が、国の形を設計していたからそこ、その通りになっていたとも言えます。
(p.157)
完了の方のお仕事
そして何かあると、すぐにメディアに出ている人や有識者のところに、「ご説明」い行く。実は私のところにも、いろいろなところから「ご説明」がやってきます。「社会保障と税の一体改革についてあらかじめご説明申し上げます。消費税率を5%上げて、社会保障の充実にも使うのです。海外と比べてみてもおかしな数字ではないはずです・・・」いった具合ですね。つまりテレビに出たり、雑誌に記事を書いたりするときに、その人が少なくとも誤解に基づく批判をしないように、あらかじめ手を打っておくわけです。こうして手の内をさらしてしまったので、もう私のところには来ないかもしれませんが・・・。
(p.158,159)
池上さんの覚悟に驚かされます。
自分たちが少数派
その意味で残念なのは、ネット利用者が、自分がネットを利用して感じている感覚と世論調査がズレてくると、「マスメディアは偏向報道している」「世論調査も自分たちにとって都合のいいようにしているだけだろう」と言い出すことです。これはとても残念なことであり、不健全な考え方です。日本のマスメディアは、世論調査にバイアスをかけるような、つまらないことはしません。ネットの利用者は、まず、「自分たちの方が少数派なんだ」という自覚を持つことが大事です。
(p.187)
おおっと、そうきましたか。ぼくのことをおっしゃっていますね。池上様のおっしゃることですが、こればっかりは承服しかねる!ぼくはぼくの感覚を信じるぞ!なーんてね、ぼくはそんなに傲慢じゃないのでご安心を。
ポピュリズム
ポピュリズムを日本語に訳すならば、「衆愚政治」になります。政治家が民衆の人気取りに走ってしまい、本当に必要な政策を実行しない。そして民衆もそれを咎めることができない。それがポピュリズムの基本的な症状です。
(p.205)
政治を批判する前に、政治について知って
まずは政治の仕組みを理解し、新聞を読んで政治状況を知った上でコメントしてほしい。そう思ってしまうことが多々あるのです。
政治不信が広がっています。政治が私たちの思いに応えていない。それは、その通りです。でも、政治家は政治家なりに、国家社会のことを考えています。そうした政策や方針を知らないまま、勝手に政治家や官僚を叩く。そんなことが多過ぎます。それでは世の中はいつまで経っても、よくなりません。
そんなことが続いていると、政治家の中には、ひたすら有権者におもねる人も出てきます。これぞポピュリズムです。
政治を批判するなら、まずは、政治の基本を知っておきましょう。そんな思いから、この本を書きました。
(p.234)
アイアイサー!